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にこにこ人生読書ノート

にこにこ人生読書ノート

隆慶一郎さん

『死ぬことと見つけたり (上)』                ★★★★☆
  隆慶一郎  新潮文庫
・出来得る限りこと細かに己の死の様々な場面を思念し、実感する。つまり入念に死んで置くのである。思いもかけぬ死にざまに直面して周章狼狽しないように、一日また一日と新しい死にざまを考え、その死を死んでみる。不思議なことに、朝これをやっておくと、身も心もすっと軽くなって、一日がひどく楽になる。まるですべてが澄明な玻璃の向うで起っていることのように、なんの動揺もなく見ていられるのだった。己自身さえ、その玻璃の向うにいるかのように、眺めることが出来る。
・「悪事をするなら盛大にやろうぞ」~「悪事とは成程面白いな」
・一瞬の後に死ぬことを、常時覚悟していなければならないのが武士だとしたら、どんな意味でも仕事など出来るわけがないではないか。彼等は死人である。既に死人だからこそ、平静に死を見つめ迎えることが出来る。そしてそうでなくては戦闘のプロとはいえまい。間違っては困る。彼等の仕事とはあくまで闘うことである。闘って死ぬことである。死人にほかのことが出来る道理がなかった。又それだからこそ、武士には扶持というものがあるのだ。扶持は断じて戦功に対する褒賞ではない。それはすぐれた「いくさ人」を維持していくための必要経費だったのである。
・「殿に愛される家老など無用のものだ」「武士の本分とは、殿にご意見申し上げて死を賜ることだ」意見するには意見出来る立場にいなければならない。家老、年寄、近習。藩の中でもほんの一握りの武士にだけ許された特権ではないか。「だから武士たるものは、全力を尽くしてその地位に登るために励まねばならぬ」
・殺しに酔うとる。「そうなったら、人間は終りだ。気を付けろ」
・それは守りのない剣である。自分たちはすでに死んでいる。死人を守るのは愚かであろう。剣はすべてこれ相手を殺すためにある。体力の尽きるまで斬撃に次ぐ斬撃を送り続けねばならぬ。
・一度刀を抜いたら、最後まで斬り伏せる。間に何が入ろうと斬る。仏が立てば仏を斬り、神が立てば神を斬る。
・人間のすることに理屈はどうにでもつく。だがすべて嘘である。何を考えるかではなく、何をするか或いはしないかで男の価値はきまる。
・二十四、五歳でも餓鬼はいるし、9歳十歳でも大人はいる。
・「人間は一番危険な獣です。獣の方がよく知っています」
・人使いの難しさは、やって見てよく分かった。完璧な部下など一人もいなかった。何の役にも立たぬのもいたし、屁理屈をこねて逆に仕事の邪魔をする者までいた。自分でやった方が余程早いと思って動こうとして、こっぴどく叱られた。その叱られ方が奇妙だった。「楽をしようとしてはならぬ」
・悪臭を恐れぬ馬力
・一生忍びて思い死にするこそ、恋の本意なれ。
・「悪には悪の誇りがある。その誇りは、罰を受けることで初めてはっきりするんだ。どんなに悪さをしても罰を受けねえんじゃ、誇りはずたずただよ。生きているのもいやになるだろうなァ」


『死ぬことと見つけたり (下)』                ★★★★☆
  隆慶一郎  新潮文庫
・「受けとめなかったら、どうなる?」
・西坂流
・余計な思案をしなければよかった。よく父親から云われた腹を切ることの難しさを、つくづくと感じた。生命を惜しんだつもりはないが、結果的にはそういうことになってしまった。思案するということ自体が、生命を惜しんでいると云うことだったのかもしれない。
・それで駄目になるような男は所詮駄目な男なのである。それに生涯一度も劣等感を抱かなかった男など、碌なものになるわけがない。
・生命を張って正義を貫く気概
・「御主君たるもの、常に家臣に意趣を持たれ、狙われることは百も承知の上で行動なされるべきではないか」「申されること、なされることに責任と覚悟が必要なのは当たり前ではないか」
・誰でも死ぬ時は独りだ。
・没義道
・嘘つきは自分をかばうために嘘をつくわけではない。相手を失望させたくないばかりに嘘を云う。相手の心が傷つくのが見ていられなくて嘘をつくのだ。その心は優しさに溢れていると云っていい。それに較べて正直者の心はむごい。相手の傷みより、自分が嘘をつく傷みの方を避けようとするのだから当然である。かたくなであり、頑固であると云うよりも先に、自分を守る心が強い、利己的だと云うべきだろう。


『吉原御免状』                        ★★★☆☆
  隆慶一郎  新潮文庫
・悔恨はなかった。敵を斬るための刀法をまなんで、現実に人を斬り、悔恨を覚えるとは、矛盾ではないか。刀を握る動作一つにも、敵を斬るためと思うべし。
・天は我に何をさせんとしているか。 天は我をどこに導こうとしているのか。
・「この歳まで人間をやって来て、生命を狙われるおぼえもないようでは、男の値打があるまい。そうは思わないかね」
・死んでゆく者にとって、死になんの意味があろう。どんな死にざまをしようと、死はそれ自身では虚であり空虚にすぎぬ。その死を哀惜する生者にとってのみ、死は意味をもつ。その時はじめて死者はいわば生き返るのではないか。
・「なまじの情けは、仇だ。我身が罪つくりに出来ていることを、日毎夜毎、神仏にお詫び申し上げるんだね。出来るこたぁそれしかねえ。また、それ以上のこたぁやっちゃいけねえんだなぁ」
・「書を読んで、書を信じるな」
・固定観念


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